世界と日本の風と土

世界と日本の風と土

日本とイギリスで農村計画を学ぶ女子学生のブログ。いかしいかされる生態系に編みなおしたい。

”コミュニティコーディネーター”とは? 「余白を残した提案でボトムアップから接続せよ」 by FoundingBase

心が動いた言葉をログするココログvol.2。今回は”コミュニティコーディネーター”という言葉に惹かれて即申し込んだこちらのイベントからログします。

f:id:foodwriter:20200707191506j:plain

Facebookイベントページより引用

消滅可能性都市だの地方創生だの騒がれはじめたのが5年ほど前。当時大学2年生だった私は、中山間地域フォーラムのシンポジウムで専門家の先生たちや地域で実践される方々が ”名指し” で消滅可能性が宣告されたことについて議論している様子を見ていました。そこで危惧されていたのが「あきらめ感」の高まり。地域をどうにかしたいと思って活動してきた人たちが、”消滅”というレッテルを貼られ、いわば余命を宣告されたことで、たちまち意欲を失ってしまうのではないかと心配されていました。


あれから良かったか悪かったか、行政からの予算もつくしといういことで、大手コンサルはじめ色んな人たちや組織が地方に入り乱れるようになったと思います。地域づくりや地方創生関連のスタートアップ企業もかなり増えた印象です。


「あきらめ感」に関しては、現場の人たちからしたら、あきらめるもなにも目の前に困っている人たちがいるんだから「やらんにゃしょうがない」というのが実情な気もします。(私が調査させていただいた地域の方々の反応はそんな感じだった。)それに、消滅可能性の指標自体が若い女性の人口減少率を目安にしているので、人口維持や増加にこだわらなければ、あまり重く受け止める必要もないかもしれません。


そもそも日本全体で人口が減ってきているのに、人口を取りあったってしょうがないじゃないかという話は、地方創生うんぬんの前から言われていたことでした。こうした流れのなかで注目されたのが「関係人口」という考え方だったと思います。いきなり移住・定住を目指すんじゃなくて、ゆるやかに地域とつながる。心地よい距離感で地域と関われる「関わりしろ」を増やそうということで、観光にとどまらない交流や都会にいても地域と関われる機会の創出などが模索されてきました。


えーそろそろ本題に入ります(笑)
こうして\地方との関係性を増やしてこ/と、各地でいろんな事業が立ち上がって来たのですが、はて、それって誰のための何だったんだっけ?という疑問がわいてきまして。結局は地域側が負担を強いられる形での交流だったり、現場の問題は現場で解決するしかなかったり、関係人口うぇーいっていって自己実現のために地方を消費するような輩が出てきたりしてはいないだろうか…。ええ、うぇい系を責めているわけじゃないですよ。それだけで瞬間的な活気は高まるわけですし、それをハンドリングできない地域も地域なので。でも、地方創生や関係人口のブーム化によって、関係の質を問う間もなくきちゃってる地域も多いかもなあと。


だから、地域内外の調整役が絶対に必要だし重要だと思う!!
そんでもって昨今の地域づくり界隈の動向をみていると、コミュニティコーディネーターやらコミュニティデザイナー、コミュニティマネージャー、コミュニティディレクター、コミュニティビルダーなどなど、コミュニティコミュニティうるせえ。(←口悪い)
この横文字星人たちは一体何者なんだとずーーーーーーーと思っていたんです。地域づくりの勉強をしていると「コミュニティ」なんてたやすく口にしたくないややこしい概念なんですよ。社会学の沼だよ沼!まったくもう。


とはいえ、大事なのは肩書ではなく中身。話を聞かずしてはわからんぞということで、今回のイベントに参加しました。コミュニティコーディネーターとは何なのか?どんな役割を担っているのか?など、お話のなかで見えてきたことをまとめていきます。

 

~概要~

日時:2020年7月6日(月)19:30~21:40

主催:(株)FoundingBase

スピーカー添田瑠璃さん、大脇政人さん(新潟県三条市)、坂和貴之さん(島根県津和野町)

 

FoundingBaseってどんな会社?

FoundingBaseー直訳したら土台をつくる??どういうことなんでしょう?会社概要を調べてみると、HPの代わりにnoteを発見!(noteってこんな仕様にもできるんだ)

「自由」をUpdateする というMISSIONのもと、地方を軸に事業展開している地方共創ベンチャー企業です。


ほう。もう少し詳しく見てみると「私たちの考える「自由」とは、自らの意志で未来を創っていくこと。」とあります。じゃあ「自由」と地方のまちづくりって、どうつながっているんだろう?とお話をきいていくと、どうやら地方共創というスタンスを大事にしているみたい。

f:id:foodwriter:20200709203413p:plain

FoundingBaseのnoteから引用


ここで一番 ”おっ” となったのが、地方共創の主体者が「私たち」になっていて「自分たちが地域に入ってビジネスをつくっていく」と言い切っていたところ。潔い。そして、これまでの地方創生に対して「結局情報を流しているだけではないか。情報発信だけで地方は変わるのか?」という明確な問題意識をもっていること。これにも好感がもてました。だって、地方創生とかいって地域の外部から入ってる人たちって、”地域のため”と言いつつも一時的なプロジェクト期間だけしか関わらなかったり、あくまでも地域のお手伝いという1歩2歩ひいた立場を取ることが多い気がするから。社員が移住して事業をつくろうというところに本気度を感じます。なんだか地域おこし協力隊みたいだな。(あれ、だったら協力隊になった方が生活安定しない?と思ってしまったがいったん置いておく。)
魅力あるContentsつまり「その地ならではの感動体験の提供」によってヒトを呼び、関係人口を増やし、地域経済を活性化するという戦略のようです。


会社概要の説明のあとは、実際に現場に入られている大脇さんと坂和さんからそれぞれの地域についてお話していただきました。  

印象に残った言葉

f:id:foodwriter:20200710000042p:plain


坂和さんが津和野町の紹介であげていた町長の言葉です。地方の状況が伝わります。冒頭であげた「やらんにゃしょうがない」という言葉とも重なります。何とかしなきゃという想いはあるけれど、何をしたらいいかはわからない。


ここでFoundingBaseのような人たちの出番です。大脇さんは「「まち」は住民たちがイメージしたものにしかならない。地域の可能性・未来を提示し住民の認識をアップデートする必要がある。」とおっしゃっていました。シャッター商店街もある意味では住民たちがイメージしたものだと。まあ、そこまで言うのはちょっと失礼なんじゃないかなと私は思ったけど(誰も望んでシャッター商店街にしたわけではないだろうから)、でも、手遅れになる前にアイデアを出して実行していくことは大事だと思う。アイデア出すのも実行するのも地元の人だけでは限界があるのも事実だから、よそ者の力が必要。


ということで、坂和さんのお話がとっても参考になりました。

f:id:foodwriter:20200710001827p:plain


坂和さんは地域のキーパーソン(この人とはつながっておきたいと思う人)に会いに行くとき、相手の話を聞きたくても必ず自分からアイデアをもっていくようにしているそうです。そうすると相手からの反応も得られるし、宿題がもらえる。それを口実にまた会って話すことができる。そうやって常に ”この人と一緒に何ができるか” を考えて関係性を紡いでいくそうです。なるほどー。さらに、重要なことはアイデアをがちがちにしないこと。あえて余白を残しておくことで、地域なりの答えを導き出して、ボトムアップで行政からの評価やお金とくっつけるというやり方です。補助金ありきで活動をスタートすると、”やらされ感”でやる気をなくしてしまうけど、はじまりが自分たちのアイデアであれば、行政からお金がもらえることはモチベーションにつながると。その実践として、つわのスープという住民によるプレゼン大会も開催されているそうで、とても興味がわきました!やっぱり、住民が住民を応援できる仕組みって大事だよね。

質問タイム

私からは3つ質問を投げてみました。

Q1. まちづくりで失敗したなーと思った経験、見聞きした事例はありますか?

まちづくりや地方創生の成功事例みたいなのって毎年のように表彰されているし、国も実績としてほしがるから見つけやすいけど、失敗ってあるのかなと気になって聞いてみました。もっといえば、現場の ”コミュニティコーディネーター” にとって失敗ってなんなんだろうっていうのが知りたくて。でも、ほかの質問と一緒にされてしまったので、まちづくりの苦労や失敗という話題に…

回答としては、「豆さを怠ると急にわからなくなる。」「スピード感の調整が難しい。」の2点。豆さって、報告・連絡・相談的な話なのか?具体的にはよくわからなかった。スピード感っていうのは、ビジネスという観点で事業をつくらないといけないという意味でのスピードらしい。

 

Q2. まちづくりの目的 こうなったらいいなという理想の状態はありますか?

「地方共創」というのがビジョンとして掲げられていたけれど、現場の肌感覚として、どうなるのが理想なのかというのが知りたかった。魅力的なContentsでヒトを呼んで、地域経済が活性化するのが真にまちづくりの目的なのか?それは手段じゃないのか?だったら、まちづくりの目的は何なのか?

回答としては、「社会的弱者(子ども、障がい者)が参画できるまちづくり」「行政の財政が適正にまわるかが大事」の2点。んーしっくりこなかった。その上で、どうなるのが良いと思っているの?という疑問が残りました。

 

Q3. 事業の撤退、地域からの撤退の判断基準はありますか?

あえてぶっこみました。個人的にこれが一番興味があった。自分たちが主体者として地域に入るっていうことの意味がどこまでを示しているのか、どう考えているのかなあと。でも司会の添田さんに拾ってもらえなかった…。結構おもしろい質問だったんだけどなあ、残念。。

 

まとめ

結局、コミュニティコーディネーターってなんなの?ということについては、はっきりとした答えは得られませんでした。でも、なんとなく働き方のイメージは湧いたかな。FoundingBaseは、わりとどっしり地域側にベースをおくアプローチだった。地域づくりとかまちづくりって、どうしてもボランタリーな面が強いし、本業や普段の暮らしの片手間に関わるものという位置づけが根強いけれど、そこを専業としてできる人がいることはすごく重要だろうなと思いました。

自分の研究分野に近い内容だったから、いろいろと偉そうに書いてしまったけれど、全部自分に跳ね返ってきています。研究と実践は違うし学問とビジネスも違う。地域で実践している人たちから学べることはいくらでもあるんです。

地域づくりには答えがないからこそ、余白を残すという考え方は本当に大切だと感じました。私自身、ついついがっちがちに考えてしまったり、文章やプレゼンもつくりこんでしまったりするので、余白のデザインを忘れずに意識していきたいです。