世界と日本の風と土

世界と日本の風と土

日本とイギリスで農村計画を学ぶ女子学生のブログ。いかしいかされる生態系に編みなおしたい。

【北海道浦幌町】うらほろで見つけた希望ある農村の未来

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♪〜 あーあーあああああーぁ あーあーあああああー
この景色みてたら歌いたくなる。ほんと、さだまさし天才だよね。


北海道を訪れたのは10月下旬。ちょうど紅葉真っ盛りで、世界はセピア色に包まれていた。どこか懐かしく、思わず深呼吸したくなる風景。


ゴゴゴゴ…どこまでも続くような広大な大地では、大きな音を立てて大きな車輪が土を掘り返している。こんなにイカツイ農機ははじめて見た。カッコいい!今はビート(甜菜)を収穫する時期なんだなぁ。畑の端っこに山積みにされている。


空も良い。横に大きく伸びる白い雲がゆっくりゆっくりと流れていく。いつもよりも近い気がした。これが東京の空とつながっているなんて信じられない。まるで時間の流れ方がちがう。


札幌から4時間ほどバスにゆられ、向かうは帯広。昨晩すすきので飲み過ぎた二日酔いの身体にはさすがに応えたけれど、これも旅の醍醐味ということで。うとうとしていたら、あっという間に着いた。

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札幌飲みたのしかった(M氏、E氏ありがとう)

 
あ、あれかな?
待ち合わせをしていたSoraさん(仮名)が車で迎えに来てくれた。はあ、リアルで会えるなんて!画面越しでお会いしてから1ヶ月。本当に私、北海道に来たんだ…!


そう、”来てしまった”というのが今回の旅のはじまり。すべてはご縁だ。人のつながりで、以前SoraさんとZoomでお話したときに、雷がズッドーーーーンって落ちたような鳥肌が立つくらいの共感、というか共振があって(文字通り震えた)、絶対行くと決めたんだ。浦幌町に。

 

いざ!浦幌へ

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浦幌町HPより

浦幌町のプロフィール
・行政区:北海道, 十勝郡, 浦幌町
・人口:4,615人(2019年)
・高齢化率:40.8%(2019年)
・面積:729.85 km²(東京都23区より広い)
・人口密度:6.3人/km²
・特徴:食料自給率2900%!!、うらほろスタイル

 

北海道の右下、十勝郡にある浦幌町。太平洋に面した南北に長い町で、海あり川あり山あり、とても自然豊かな地域だ。この脅威の食料自給率からも土地の豊かさが伝わってくる。


町に着くなりドライブしながら中心部を案内していただいた。第一印象はというと、”え、すご、なんでもあるじゃん…!”

市役所、郵便局、スーパー、幼稚園、小学校、レストラン、パン屋さん、ケーキ屋さん、銭湯、博物館、スポーツセンター、野球場、スケートリンク、オートキャンプ場、森林公園などなど

主要な町の機能+レジャー施設がぎゅぎゅっと詰まっている。

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飲食店なんか通り沿いに10軒以上あって驚きもものき。過疎のひなびた雰囲気を予想していた私は拍子抜けしてしまった。(大変失礼いたしましたっ)


これならご飯の選択肢にも困ることはないし、どこへ行っても何を食べても美味しいのが、さすが北海道!!ほんと毎日最高だったな~。


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この居心地のよさはなんだろう

Soraさんのお家に荷物を置かせてもらって、次に向かったのは、浦幌の地域づくりや地方創生を担う十勝うらほろ樂舎(以下、樂舎)のオフィス。Soraさんは企業からの出向という形で、樂舎のお仕事をされている。


普通に考えて、地方のまちづくり会社に企業から出向ってどゆこと??って感じなんだけど、この理由がわかるまで長くはかからなかった。


「こんにちは~。お世話になります~。」
ガラガラとプレハブ小屋のようなオフィスに入ると、さわやかなお兄さんたちが迎えてくれた。そう、先にいっておくが、会う人会う人みんな若いっていうのも浦幌の驚きポイントだ。


滞在期間中はSoraさんのお隣りの席を使わせてもらえるとのことで、みんなが向き合って座るデスクの一画をお借りした。こんないきなり来た東京の人間が図々しく申し訳ないなと思いつつ、お仕事体験の初日みたいな気持ちでワクワクが止まらない。


そうこうしているうちに、樂舎の代表を務められているUmiさん(仮名、もはや顔が割れているけど)があらわれた!浦幌の絶対的なキーパーソンだ。
ご挨拶をさせていただいて、そのまま奥の部屋で浦幌の地域づくりや樂舎の取組についてお話していただけることに。


こんなに物腰がやわらかくて地域に対して静かなる情熱を持っている方にお会いするのは初めてかもしれない。この人だな。この人が引き寄せている、そんな気がした。


「どういったつながりで浦幌に?」


きっかけは、Soraさんとの共通の知り合いにつないでもらったことなのだけど、なぜ私の中に雷が落ちるほどの衝撃が走ったのか、ちょっと長くなってしまうが、ここにも記しておきたい。

私は東京農工大学農村地域計画学研究室というところに所属している(現在、修士2年生)。農村地域の将来を考えていく上で、住民の主体性をどう育んでいったらいいかといったことや、どうやって意思決定を支援していったらいいのかといったことを大きな命題として掲げている研究室だ。


そのなかで、学部生のときから ”農村の内発的な発展を促すためには、住民の地域への愛着が大事なんじゃないか” という視点から、どうやったら愛着が育まれて、それが内発的な行動に結びつくのかというのをずっと考えてきた。でも、やっぱり地域のなかの人たちだけでやるのは限界があるし、地域おこし協力隊など外から新たな考え方を運んでくれる人との関わりをもつことで、さらに自分たちの地域に対する誇りをもてるようになったり、ここも良いところなんだなと思えたっていう話を聞くことも多かった。

そんな話をSoraさんにしていたら、Soraさんが浦幌でやっている都会の修学旅行生向けの探求学習のプロジェクトについて教えてくれた。


実は私自身も、農村地域の未来を一緒に考えて何かやりたいと思ったきっかけが、中学生のときの修学旅行(岩手県でのファームステイ)だったりする。そのときに、全く違う暮らしにふれて、もっとこういう農村の暮らしを知りたいし、それらを後世につないでいくべきなんじゃないかって思ったんだ。逆に都会のシステム依存は、なんかまずいぞという感覚も年を重ねるうちに募らせていった。


だから、修学旅行を通じて、ただ現地に行って体験しておわりじゃなくて、もっと前の段階から現地の人との関わりがあって、現地に行ったらそこの人たちの困りごと解消にちょっと貢献できる、そして帰ってきてからも〇〇さん元気かなって地域に思いを馳せるみたいな、そういう体験をちゃんとつくれれば、私みたいに東京出身でふるさとがない人も、第二の故郷のような感覚で関わりたいと思える地域に出会えるんじゃないか。地域側にとっては、おもてなしを期待する客ではなくて、現地の暮らしを通して一緒に地域のことを考える仲間を増やしていくことが大事なんじゃないかと、研究の傍ら考えていたのだ。

Soraさんがやっているプロジェクトって、めちゃくちゃ私が考えてきたことと重なる部分あるじゃん!!とビビビときて、浦幌に来てしまったというわけだ。

Umi さんは、うんうんと頷きながら耳を傾けてくれて、話がおわると「外れてる箇所が見当たらないなぁ。やっぱりこういう人が集まるんだね~」みたいなことをつぶやいていたと思う。ここに来たのは間違いじゃなかった。ほっとしたような嬉しい気持ちで満たされた。


ちなみに、この ”ほっ" とする感じ、うまく言語化できないのだけど、浦幌で何度も感じたんだ。それは、浦幌の人同士のコミュニケーションの取り方を見ていてもだけど、「心理的安全性」とでもいえばいいのかなぁ。いきなり東京から来た私でさえ、すっと溶け込ませてもらえているような居心地のよさがあった。なんというか、自由を爆発させて(ややこじらせて)いるのとは違って、圧倒的な安心感というか信頼感があるからこそ、一人ひとりが能力を発揮できる。そんな雰囲気だった。

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みんなで韃靼そばを囲んだり楽しかった


そういうわけで(いろいろ端折る)、浦幌には \\ここでチャレンジしたい// という想いを持った若者が集まってくる。樂舎は、その窓口や調整役となって、「次世代が引き受けてよかった!」と思えるような「持続可能な地域づくり」を目指して、町行政や企業と連携した事業を行っているのだ。

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十勝うらほろ樂舎HPより

 

地方から希望ある未来を育む「うらほろスタイル」

でも、なんで浦幌ではこんなに寛容な地域づくりができるんだろう?そのヒントは「うらほろスタイル」という独自の取り組みにある。(個人的にこのネーミングセンスがツボすぎる…!)
「うらほろスタイル」には、5つのプロジェクトがあるのだが、またこれがどれも素敵すぎて感動の嵐。以下、それぞれ簡単にまとめてみた。(詳しくはHPをみてね)

 

1.地域への愛着を育む事業

しょっぱなから、これぞ私が追い求めているものなのでは??と思ってしまった(笑) 浦幌では小中学校の9年間を通して、一貫した「うらほろスタイル教育」を行っている。学校と地域が連携して、学年に合わせたふるさと学習や体験プログラムを用意し、地域の魅力を発見するのと同時に、自分が育った町への誇りや自分自身に対する自信を身につけていくというものだ。地域の人たちが普段から顔を合わせられる距離にいるからできることだし、一次産業を中心に多様なナリワイを営む人や組織が協働するからこそできる地域教育のあり方だと感じる。


具体的には、「農園活動や育てた作物を使った調理実習、町の文化や産業に触れる体験、町内魅力発見バスツアーや、町外でのまちのPR活動など、様々な学習活動を経験します」だそうな。これ絶対楽しいでしょ!

 

2.農村つながり体験事業

小学5年生になると、町内の農家さんや漁師さんの家庭で1泊2日の民泊を経験することになっていて、生きるために大切な食や命について学ぶ。「農村に住んでいるからといって、必ずしも農林漁業のことを知っているわけではない」 というのはなるほど。これだけ食料自給率が高い町だから、きっと一次産業の大切さや誇りを実感できるんだろうなぁ。羨ましい。


信じられる他人


Umiさんが繰り返し口にしていた言葉だ。実は、Umiさん自身も東京の出身であり、農林漁業の大切さや一人では生きられないことを農村から学んだうちのひとりだそう。学校の座学では得られないない「学びの資源」が農山漁村にはある。だからこそ、農村・農林漁業を身近に感じて欲しいという想いで活動してこられたとのことだった。


こうした想いは浦幌にとどまらず十勝郡全体に共有されており、こりゃまたすごいなと感激したのだけど、十勝の全19市町村で年間約2000人もの都会の高校生を受け入れている。しかも、15年間近く十勝としての一体感をもって取り組んでいるのだ。

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とかち農村ホームステイの窓口は「食の絆を育む会」に統合されている


農村・農林漁業を国民みんなの自分ごとにする」を目指して、《地元の子どもたちには自信と誇りを》《都会の子どもたちには愛着と理解を》育む農村ホームステイ。その成果として、進学や就職で十勝にU・Ⅰターンする人も出てきている。こうした目に見える形じゃなくとも、きっと多くの子どもたちにとって「信じられる他人」との出会いは、心の拠り所になっているのだろう。

 

3.子どもの想い実現事業

中学3年生になると、「うらほろスタイル教育」の集大成として、チームごとに浦幌を元気にするアイデアを考えて発表する。それを "すごいね" "いいね" で終わらせないのが浦幌の素敵なところ。実現が難しいものでも、大人たちが月に1回ほど集まって、どうやったらできるかを真剣に話し合っているのだそう。


そこには「子どもたちが将来どこにいても自分の夢や人の想いの実現に積極的であってほしい」という大人たちの想いが込められている。後ろ姿を見せるとは、まさにこういうことをいうんじゃないかなと胸が熱くなった。

 

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子どもたちの想いから誕生したゆるキャラ浦幌町観光情報サイトより)

 

4.高校生つながり発展事業

冒頭で ”浦幌にはなんでもある” っていったけど、ないものもあるんだ。2010年に閉校してしまった高校だ。それ以降、子どもたちは町外の高校へちりぢりになってしまっていたのだが、2016年に「うらほろスタイル教育」を受けて育った当時の中学3年生が ”浦幌高校を復活させる” といって「浦幌部」を立ち上げたのだ(このネーミングもかなりツボ)。素敵すぎる!!浦幌部の高校生たちは、町内のお祭りに屋台を出すなど、町のためにできることに取り組みながら、実践的な「生きる力」を身につけていく。そのなかで、地域の大人たちや都会の企業で働く人たちと関わりながら、自らの人生について考えることができる。


こういうのをキャリア教育というらしいのだけど、就職がゴールの教育ではなくて、生涯にわたって自ら学び考え行動する力を養い、社会的に自立することが目指されているんだって。これって、学校だけじゃ絶対にできないから、地域で取り組むことの必然性はここにあると感じるなぁ。私もこんな環境で育ちたかった!!

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「浦幌部」の活動拠点でもある「うらほろスタイル複合施設FUTABA

 

5.若者のしごと創造事業

 「浦幌に住み続けたいけど、仕事がない」うらほろスタイル教育のコンプリート世代から寄せられた切実な気持ちだ。浦幌も多くの地方と同じように、どうやって若者が就きたいと思う仕事をつくるかに課題を抱えている。そこで、町の人たちは立ち上がった(もはや、ここまできて何もしないわけがない!)。


さっき紹介した「子どもの想い実現事業」の中学生の「地域活性化案」をもとに、町の花であるハマナスの栽培を通した交流拠点「まちなか農園」を開設し、さらに、地域おこし協力隊と協力して、ハマナスを活用したオーガニックコスメブランド「rosa rugosa – ロサ・ルゴサ」を立ち上げたのだ。つくづく、浦幌は地域の中の人と外の人のエネルギーを混ぜ合わせるのが上手いなと尊敬する。

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このハマナスビジネス以外にも、地元の林業者や都会の企業に勤める方を中心に設立された林業会社「BATON+」(社員さん全員が副業として携わってるんだって!)や某大手IT企業出身の方が開発された十勝の森を疑似体験できるデジタル森林浴「forestdigital」、浦幌の観光事業に取り組まれている地域おこし協力隊の方(私と同い年なのにすごい落ち着いておられる(震え))が立ち上げられた「リペリエンス」などがある。すごい、すごいぞ浦幌。
 

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廃校を活用した起業拠点「TOKOMURO Lab

 

人がのびのびと育つ場としての農村の価値

浦幌という地域に出会えて、私はすごくすごく、言葉にできないほど嬉しかった。こんな素敵な人たちがいて、オープンでフラットで、チャレンジ精神(ここなら自分にも何かできそう/ここで何かしたいっていう自己効力感みたいなもの)がわいてくるような農村があるんだ!と、感動で胸がいっぱいだ。

 

地域づくりは人づくり」とはよくいうけれど、人がのびのびと育つ環境があってこそよなぁ。
地域活性化も地方創生もいまいちピンとこないんだ。やっぱり本質は地域を活性化することそのものじゃなくて、人がいきいきと遊び、学び、働き、暮らせる環境を整えていくことにあるんじゃないかな。そうしたら自然と地域には活気があふれてくると思う。このことを改めて浦幌で感じることができた。


もっと浦幌のこと、浦幌の人、浦幌の農林漁業について知りたい。ここで希望ある未来を切り拓いていくための知恵を学びたいと思った。

 

さいごに、突然東京から来た私に(このご時世なのに)浦幌のことをたくさん学ばせてくださり、想いを伝え受けとめてくださった、Soraさん・Umiさんはじめとする浦幌のみなさまには、本当に感謝してもしきれません。はじめて訪れたはずなのに居心地がよく、また帰りたい場所になりました。また来年、浦幌を訪れるのが楽しみです!

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■参考

浦幌町HP:https://www.urahoro.jp/index.html
・十勝うらほろ樂舎:https://uragaku.or.jp/
・うらほろスタイル:http://www.urahoro-style.jp/
・複合施設FUTABAhttp://www.urahoro-style.jp/futaba/
・食の絆を育む会:https://www.shokuhug.com/
・BATON+ HP: http://batonplus.com/ 
 BATON+ note:https://note.com/batonplus1
・forestdigital HP:https://forestdigital.org/
・浦幌の観光情報:https://www.urahoro-tourism.com/
・ TOKOMURO Lab:https://tokomuro-lab.com/

 

■旅の概要

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▶ざっくりとした目的:なんだかおもしろそうな浦幌町へ行ってみる!

▶期間:2019年10月19日(月)~24日(土)

▶ざっくりとした費用:合計2万円くらい
 札幌滞在(行き航空券+1泊)※:8500円 − 8000円(JALマイル利用)= 500円
 交通費(札幌→帯広):3,300円
 交通費(帰り航空券):6,280円
 食費:1万くらい? − 2000円(地域共通チケット)※
 ※Go To Travelキャンペーンほんとありがたかった