世界と日本の風と土

世界と日本の風と土

日本とイギリスで農村計画を学ぶ女子学生のブログ。いかしいかされる生態系に編みなおしたい。

シュトレンと小さなしあわせ

 

今日はちょっといいことがありました。

 

いつものように高速バスに乗ろうと思って中央道へ。珍しく余裕をもってバス停に着いたので、昨晩いっきにみてしまったNetflixドラマの感想を記録したりと余韻に浸っていました。

 

おぉ、今日は珍しく時間通りに来たなとバスに乗り込んだら、あれ、1本あとのバスだったらしい。

 

いつもこんなことはないのに1時間まちがえて早く来てしまっていた。

 

すみません(汗)とあわててバスを降りたところ「そっちのバスはキャンセルして、こっちのバス、現金払いなら乗れるよ」と運転手さん。

 

なんと親切な!お願いします!といつもなら即決なのに、なぜか今日は何を血迷ったか、もう払っちゃったのでいいです!ありがとうございます!と断ってしまった。何やってんだー。キャンセル料100円しかかからないの知っているのに…

 

なんであの時にこうしなかったんだろうと思う瞬間ってたまにあります。

 

発車するバスを眺めながら、なぜ乗らなかったのか、早めに現地で散策したりカフェにでも入ったらよかったのに、そういう咄嗟の判断力に欠けてるよなぁ私、あーあって思ってた、3秒くらい。

 

1時間ここで待つ〜?それはちょっと寒いし、次々来るバスが止まってくれるのも気まずいしと、自動的に手はスマホをとりだしGoogle Mapにカフェと打ち込んでいた。

 

お、あるじゃん。スタバと個人のカフェが歩ける距離に。こういうときは個人店を応援するのがマイルール。というわけで、バックパックを背負いなおしてバス停を出た。

 

コーヒーでも飲んで少しゆっくりできれば…という気持ちでお店に入ると、口コミ通りデザート担当とおぼしき奥さんとコーヒー担当のマスター、それに常連ぽいおばさまが一人、奥さんとおしゃべりしながらトマトパスタを食べていた。

 

どこでもどうぞとのことだったので、さりげなくクリスマス飾りがされてある窓辺の席を選んで、奥さんの手づくりに違いないカボチャプリンと深煎りのジャーマンブレンドをお願いした。

 

今年もいろいろあったなと手記を読み返しながらぼーっとしていたら、奥さんがプリンをもってきてくれて、コーヒーはマスターが持ってきてくれた。ミルクと砂糖はお断りしたのだけど、うしろでマスターが、同じくミルク砂糖不要という常連のおばちゃんに「僕はミルクと砂糖入れるのも好きなんだけどね」と(へえ、そうなんだ、ならもらえばよかったかな。)おばちゃんいわく「家のインスタントだったら私も入れるけど、お店のコーヒーに入れたら香りがなくなっちゃうでしょ」(うんうん。だよね。)

 

この店に流れる日常に相づちを打ちながら、雑味のないコーヒーと素朴な味わいのカボチャプリンの共演にほっとしていたら、横からすっと小さな焼き菓子があらわれた。

 

「クリスマスなので、よかったらシュトレンどうぞ」と奥さん。

 

わあ…シュトレン食べたいと思ってたんだ。このあいだプレゼント交換用にパン屋さんで買って、自分ではなかなか食べないもんなぁと思っていたところだった。だから、とてもとても幸せな気分に包まれた。

 

「これもつくったの~?すごいわねえ。シュトレンってさ、意外と高いじゃない。うれしいわ!」と常連のおばさま。(わかる…!)

「そうなのよ。でも、つくってみて確かに高くなるなとわかったわ。ドライフルーツとかスパイスとかいろいろ入れてみたの。」(ほんとシナモンやナツメグの香りが絶妙です!)

 

うれしいなあ。シュトレンといえば、昔、大学の恩師の大先生のお宅におじゃましたときに先生の奥さんが出してくれて、すごくおいしかったのを覚えている。先生とはコロナが流行してからお会いできていないけど、元気かなぁ。今年もご近所さんたちとお餅つきしているかな。

 

そんなことを思い出しながらシュトレンを大事にいただいた。本当においしかった。店内に流れていたクリスマシーなBGMとともに、ちゃんと今年もクリスマスのおとずれを感じられたなと満足。

 

だんだん時間もよい頃合いになってきて、お店にもほかの常連さんが集まってきたので、おいとまするとしましょう。

 

マスターがレジを打ちながら「ごめんねぇ、うるさくて。歳をとるとだんだん声がでかくなってね。」いえいえ、全然。みなさん楽しそうでいいですね!実はバスの時間をまちがえちゃって…

 

と、カフェが近くにあってありがたかったという話とシュトレンもコーヒーも全部おいしかったことを伝えて、「気をつけてね~」とマスターに送り出してもらった。閉まるとびら越しに軽く会釈をしてバス停へ。

 

さっきと同じ殺風景な高速道路の景色に戻ったけど、1時間前とはまったく違う気持ちだった。すごく温かくてほっこりした気持ち。

 

あのときバスに乗らなかった私がこの小さなしあわせを予感していたかはわからないけれど、いつもとちょっと違うだけで何かが変わるかもしれないと感じられた昼下がりでした。