こんにちは!最近部屋の模様替えをして、マンネリ化したおうち時間が少しリフレッシュされましたSaeです。
今回は、ここ数年でよく耳にするようになったサーキュラーエコノミー(Circular Economy)についてまとめたいと思います。Withコロナの時代で人や物の移動が制限されている今、新しい経済モデルとして益々注目が高まっているようです。特にヨーロッパでは、今後の社会経済復興にあたって、脱炭素に向けた気候危機対策の推進や感染症・災害に強い経済モデルへの移行を目指す「Green Recovery」の考え方が広まっています。きっとサーキュラーエコノミーはこれからの時代をつくる大きな指針になること間違いなし!ということで、サーキュラーエコノミーとはいったい何なのか、具体的にはどんな取組が行われているのか探っていきます!
サーキュラーエコノミーとは?
サーキュラーエコノミーは日本語に直訳すると「循環型経済」ですが、資源を減らすあるいは使いまわす意味の3R(リデュース、リユース、リサイクル)の考え方とは異なる概念のようです。具体的に、どのような意味なのでしょうか。サーキュラーエコノミーを推進する各団体による定義を集めてみました。
ELLEN MACARTHUR FOUNDATION(エレン・マッカーサー財団)
Looking beyond the current take-make-waste extractive industrial model, a circular economy aims to redefine growth, focusing on positive society-wide benefits. It entails gradually decoupling economic activity from the consumption of finite resources, and designing waste out of the system. Underpinned by a transition to renewable energy sources, the circular model builds economic, natural, and social capital.
(サーキュラーエコノミーは、現在の”取ってーつくってー捨てる”産業モデルを超えて、社会全体の利益に焦点をあてながら、成長を再定義することを目的としています。それは、有限な資源の消費から経済活動を徐々に切り離し、廃棄のないシステムを設計することを伴います。再生可能エネルギー資源への移行に支えられながら、サーキュラーモデルは経済的、自然的、社会的資本を構築します。)
サーキュラーエコノミー(循環型経済)とは、従来の「Take(資源を採掘して)」「Make(作って)」「Waste(捨てる)」というリニア(直線)型経済システムのなかで活用されることなく「廃棄」されていた製品や原材料などを新たな「資源」と捉え、廃棄物を出すことなく資源を循環させる経済の仕組みのことを指します。
資源や製品を経済活動の様々な段階(生産・消費・廃棄など)で循環させることで、資源やエネルギーの消費や廃棄物発生を無くしながら、かつその循環の中で付加価値を生み出すことによって、経済成長と環境負荷低減を両立するための国際的かつ協調的取り組みです。
どの定義にも共通しているのが、廃棄物を出さないという点。それも、これまでのように使い終わったものを資源として再び使うという3R的発想ではなく、そもそもの原材料調達・製品デザインの段階から資源の再利用を前提としているのが特徴だとわかります。
なぜサーキュラーエコノミーが重要なのか
電球ってなんで突然きれるんだろう?これだけ技術が発展しても壊れない物をつくるのは難しいのかな。なんて思ったことはありませんか?電球じゃなくてもパソコンやスマホだって、もう十分に何十年も使える技術は確立されているんじゃないでしょうか。でも、それらを製造する企業からすると、壊れない設計にしたら物が売れなくなるから困ってしまうわけです。こうやって、会社の利益のために意図的に製品寿命を縮めることを「計画的陳腐化(Planned Obsolescence)」というそうです。
今の社会には、本来ならもっと長く使い続けられるのに計画的に陳腐化された商品であふれかえっています。もったいないのかけらもないですね。どうしてこうなってしまったのでしょうか。
サーキュラーエコノミーの考え方では、この原因を「Liner economy(リニア型経済)」にあるとしています。さかのぼれば産業革命以降、人びとは無限に資源があるかのごとく、大量生産・大量消費・大量廃棄の直線型の構造に依存して暮らしてきました。それが資本主義経済や成長志向との相性も抜群だったので、より多く作り、より多く売り、より多く所有する仕組みで今も世界がまわっています。
しかし、こうしたリニア型経済の限界が見えてきているんです。国連の推計によると、2050年には世界人口は98億人になるとされています。当然ですが、人口が増えれば、その生活を支えるために必要な資源の量も多くなります。その資源はどこからもたらされるのか、そう地球です。人口が増えようと地球は1つだけしかありません。世界人口が78億人の現在で既に地球1個分におさまっていないことがエコロジカル・フットプリントなどの指標からわかっています。
また、効率性を重視するリニア型経済のひずみとして、気候変動や海洋プラスチックによる環境汚染、森林伐採による生物多様性の破壊といった問題が加速しています。
こうした流れから、地球上のすべての人がプラネタリー・バウンダリー(地球の環境容量)の範囲内で、環境的に安全で社会的に公正な生活をおくるための一つの経済的手段としてサーキュラーエコノミーが注目されているんです。
サーキュラーエコノミー3つの原則
では、どうやってサーキュラーエコノミーを実現していけばよいのでしょうか。ここでエレン・マッカーサー財団が定める3つの原則が適用されます。
1.廃棄と汚染を出さない設計(Design out waste and pollution)
「Waste and pollution are not accidents, but the consequences of decisions made at the design stage, where around 80% of environmental impacts are determined. By changing our mindset to view waste as a design flaw and harnessing new materials and technologies, we can ensure that waste and pollution are not created in the first place.
(ゴミと汚染は偶然に生まれるものではなく、環境インパクトの80%が決まるデザインの段階で決定されています。私たちのマインドセットをゴミはデザイン上の欠陥であるという見方に変えて、新たな材料とテクノロジーを活用することで、ゴミや汚染が最初から発生しないようにすることができます。)」
2.製品と原料材を捨てずに使い続ける(Keep products and materials in use)
「We can’t keep wasting resources. Products and materials must be kept in the economy. We can design some products and components so they can be reused, repaired, and remanufactured. But making things last forever is not the only solution. When it comes to products like food or packaging, we should be able to get the materials back so they don’t end up in landfill.
(資源を無駄に使い続けることはできません。製品と材料は経済のなかに維持されなければならないのです。いくつかの製品や部品は、再利用、修理、再製造できるようにデザインすることができます。ただし、物を永遠に維持できるようにすることだけが唯一の解決策というわけではありません。食べものやパッケージなどの製品に関しては、最終的に埋め立てられないようにし、原材料を取り戻すことができるはずです。)」
3.自然のシステムを再生する(Regenerate natural systems)
「In nature, there is no concept of waste. Everything is food for something else - a leaf that falls from a tree feeds the forest. Instead of simply trying to do less harm, we should aim to do good. By returning valuable nutrients to the soil and other ecosystems, we can enhance our natural resources.
(自然界にはゴミという概念はありません。木から落ちた葉が森を養うように、すべてのものは他の何かの栄養となるのです。単純に害を少なくしようとするのではなく、良い行いを目指すべきです。貴重な栄養素を土壌や他の生態系に戻すことによって、私たちの自然資源を豊かにすることができます。)」
まとめると、最初からゴミや汚染を出さないデザインをすることによって、製品を経済の中でできるだけ多く繰り返し使用し続け、自然にとってもプラスになるようにすることがサーキュラーエコノミーの実現に不可欠ということになります。
この3原則に基づいて、サーキュラーエコノミーのモデルを図にしたものが「バタフライ・ダイアグラム」です。左側の緑色ループは生物的サイクル、右側の青色ループは技術的サイクルを表しています。生物的サイクルでは、資源は消費され再利用され最後は堆肥や嫌気性消化により生物圏に戻り新しい生物資源の栄養となります。一方、技術的サイクルでは、資源は利用され修理・再使用・再製造・リサイクルによって経済活動の中で可能な限り使い続けられます。
いずれも重要なのは、できるだけループを内側にとどめて使用し続けること。ループが外側に移るほど価値が失われていくからです。たとえば、使用済みのパソコンから原材料を取り出して新しいものをつくり直すよりも、それを修理して使い続ける方がより多くの価値を維持することができます。だから、一番外側にあるリサイクルは最終手段なんですね。たしかにリサイクルによって廃棄を防ぐことはできますが、リサイクルのために製品を分解して原材料まで戻してしまうと、それまでの製品づくりに投入されたエネルギーや人件費などの労働力が無駄になってしまいます。さらに、リサイクル自体にも新たなエネルギーやコストがかかってしまいます。
こうしてサーキュラーエコノミーでは、徹底的に製品の原料調達から設計、製造、使用後のプロセスまでがデザインされています。
サーキュラーエコノミーの課題
とはいえ、これまでのリニア型経済をサーキュラーエコノミーに移行することは簡単ではなさそうです。既にサーキュラーエコノミーを政策目標とし取り組んでいるヨーロッパでは、以下のような点が課題としてあげられています。
✔市場が外部性を取り込んでおらず、サーキュラーエコノミーに競争優位性がない
✔リニア型からサーキュラー型への移行により失業リスクにさらされる人々に対するリスキリング(再訓練、職業支援)が必要である
✔サーキュラーエコノミーは環境負荷を下げるための手段であり目的ではない
✔素材によっては修理や再利用、リサイクルが難しいものがある
✔ガイドラインが構築されておらずサーキュラーエコノミーへの移行が滞っている
サーキュラーエコノミーに移行しようとすると、製品の修理やリサイクルに、より多くのコストや労働力が必要になるため、企業や消費者にとってサーキュラーモデルを選択をするインセンティブが小さいのが現状のようです。また、リペア・リサイクル工場が増えて、修理してもらうために地球上に物が行き交うことになれば本末転倒ですよね。ゴミを出さないことに加えて、地域循環の視点も重要になっていきそうです。
世界の動き
こうしたサーキュラーエコノミーの課題を乗り越えていくためには、実践的で革新的なビジネスの台頭が期待されますが、政策的支援も重要です。実際に世界では、政策的にサーキュラーエコノミーを推進していこうという動きが欧州諸国を中心に高まっています。
■EU
・「サーキュラーエコノミーパッケージ」(2015年12月)
目的:新しいビジネス領域の創出とSDGs(持続可能な開発目標)達成
目標:2030年までに都市廃棄物の65%、包装廃棄物の75%をリサイクルし、全種類の埋め立て廃棄物を最大10%削減する
優先分野:プラスチック、食品廃棄物、希少原料、建築・解体、バイオマス
参考:【ヨーロッパ】欧州委員会、EUの新サステナビリティ戦略「サーキュラー・エコノミー・パッケージ」を採択 | Sustainable Japan
・「欧州グリーンディール」(2019年12月)
目標:2050年までにCO2排出量を実質ゼロにする(この中でもサーキュラーエコノミーは柱の一つとされている。)
参考:欧州グリーンディールとは・意味 | 世界のソーシャルグッドなアイデアマガジン | IDEAS FOR GOOD
■オランダ
・「A Circular Economy in the Netherlands by 2050」(2016年9月)
目標:2050年までに100%サーキュラーエコノミーを実現する
参考:オランダ 2050年までにサーキュラーエコノミー100% | Circular Economy Lab JAPAN
>アムステルダム
・「Amsterdam Circular 2020-2025 Strategy」(2020年4月)
目標:2030年までに新たな原材料の使用を半分にし、2050年までに完全なサーキュラーシティになる
参考:アムステルダム市が公表した「サーキュラーエコノミー2020-2025戦略」の要点とは? | Circular Economy Hub - サーキュラーエコノミーハブ
■フィンランド
・「Leading the cycle ー Finnish road map to a circular economy 2016-2025」(2016年)
目標:2025年までにサーキュラーエコノミーのグローバルリーダーとなる
参考:フィンランドのサーキュラー・エコノミーに向けてのロードマップ(2016~2025)|幸せ経済社会研究所
■英国
>ロンドン
・「London’s Circular Economy road map」(2017年6月)
目標:2036年までにサーキュラーエコノミーへ移行する
参考:【欧州CE特集#30】サーキュラーエコノミーは、コミュニティにも恩恵をもたらす。LWARB「Circular London」に学ぶ、循環型都市への道のり | 世界のソーシャルグッドなアイデアマガジン | IDEAS FOR GOOD
>スコットランド
・2019年11月に「Circular Economy Bill」を提出
参考:スコットランドの住民は、サーキュラーエコノミーを望んでいる。環境世論調査 | Circular Economy Hub - サーキュラーエコノミーハブ
■ドイツ
・「German Resource Efficiency Programme II: Programme for the sustainable use and conservation of natural resources」(2016年3月)
目的:天然資源の抽出と利用をより持続可能なものにし、長期にわたる生命の自然的基盤を守ることにより将来世代に対する責任を果たす
参考:【欧州CE特集#17】Circular Berlinに聞く、ベルリンのサーキュラーエコノミーの今 | 世界のソーシャルグッドなアイデアマガジン | IDEAS FOR GOOD
■ベルギー
>ブリュッセル
・「Be Circular - Regional Programme 2016–2020」(2016年3月)
目標:環境目標を経済機会に変える、可能な限り地元で生産するために経済をブリュッセルに移転し、移動を減らし、土地利用を最適化し、ブリュッセル住民のために付加価値を生み出す、雇用創出を支援する
参考:Be Circularブリュッセル、ベルギー | Circular Economy Lab JAPAN
■イタリア
・「Towards a Model of Circular Economy for Italy - Overview and Strategic Framework」(2017年)
■フランス
・「Circular Economy roadmap of France: 50 measures for a 100% circular economy」(2018年4月)
・サーキュラー・エコノミーを促進するための法律「Loi du 10 février 2020 relative à la lutte contre le gaspillage et à l'économie circulaire」(2020年2月)
■ギリシャ
・「National Action Plan on Circular Economy」(2018年12月)
■ポルトガル
・「Leading the transition: a circular economy action plan for Portugal」
■スロベニア
>マリボル
・「Strategy for the Transition to Circular Economy in the Municipality of Maribor」
ちなみに、日本では「第四次循環基本計画」(2018年、環境省)と「循環経済ビジョン2020」(2020年、経産省)が策定されています。
「第四次循環基本計画」では、①地域循環共生圏形成による地域活性化、②ライフサイクル全体での徹底的な資源循環、③適正処理の更なる推進と環境再生などが掲げられており、の実現に向けた2025年までの施策が示されています。一方、今年策定されたばかりの「循環経済ビジョン2020」では、①循環性の高いビジネスモデルへの転換、②市場・社会からの適正な評価の獲得、③レジリエントな循環システムの早期構築の3つの観点から、環境と成長の好循環に向けた基本的な方向性が提示されています。
これまで、環境政策については環境省と経産省の意見がぶつかる場面がみられていましたが、サーキュラーエコノミーへの移行という共通の目標をもって、協働して取り組んでいくことを期待しています。
まとめ
今回は、サーキュラーエコノミーの概念について世界の動向とあわせてまとめました。日本でお馴染みのリデュース・リユース・リサイクルや循環型社会という考え方との親和性も高いので、私たちの暮らしの中でも環境×経済の視点がますます重視されていきそうですね。引き続きヨーロッパの実践的な取組には目をひからせていきたいと思います。
この記事は下記のサイトを参考にしています。各国におけるサーキュラーエコノミー の動向や関連コンテンツが掲載されていますので、ぜひチェックしてみてください!