世界と日本の風と土

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日本とイギリスで農村計画を学ぶ女子学生のブログ。いかしいかされる生態系に編みなおしたい。

探究学習を探究する教育ド素人の挑戦 #2 〜何を目標にどんな授業を設計するか〜

教員免許なし・塾講経験なし・子育て経験なしのアラサー大学院生によるトライ&エラーがとまらない高校の授業づくりの本音と本気の記録パート2

 

今回は「総合的な探究の時間」(以下、総合探究)の目標と内容の設定について考えます。

 

前回のブログはこちら

windtosoil.hatenablog.com

 

///天の声///

さて、まず先に申し上げておきますと、このブログを書いている現在、既にF高校で私が担当した授業は終わっています。つまり、この探究の結末はもうわかっているんです。


じゃあ、なぜ今、回顧録的にブログを書いているのかといいますと、過去の自分に言ってやりたいことがたくさんあるから!!!!


ええ、本当に大変でした。大反省、後悔いろいろありますよ。物語りが進むにつれて、そうじゃなーい、ということが色いろ起こりますので、天の声としてツッコミを入れていきたいと思います。未来の自分のための教訓です。

/////

 

総合探究の第1の目標は「自己の在り方生き方を考えながら,よりよく課題を発見し解決していくための資質・能力」を育成することでした。

 

では、授業の目標と内容はどうやって決めたらいいのでしょう?

 

学習指導要領をみると

「各学校においては,第 1 の目標を踏まえ,各学校の総合的な探究の時間の目標を定める。」(内容についても同様)

とあります。

 

なるほど、授業の目標や内容は学校ごとに決めてね、ということらしい。

 

文科省側の意図についても、読み取れる記載がありました。

「各学校が総合的な探究の時間での取組を通して,どのような生徒を育てたいのか,また,どのような資質・能力を育てようとするのか等を明確にした目標を定めなければならない」

「各学校が、第1の目標の趣旨を踏まえて,地域や学校,生徒の実態に応じて,創意工夫を生かした内容を定めることが期待されている」

 

ふむふむ。ということは、学校が定めた目標に則って授業づくりをすればいいんだな!

 

ここで、F高校の総合探究の目標をみると、【 VUCA(変化が激しく、不確実で、複雑で、曖昧な)を生きるために必要な力を身につけよう 】と【 OODAループを意識して活動すること 】が示されています。

 

出典:https://data.wingarc.com/what-is-ooda-11126

 

///天の声///

この目標設定の意図を先生に確認した方がよかったなぁ。そもそもOODAループをどの程度生徒が理解しているのかもわからなかったし、授業のなかでどこまで意識して取り入れるべきかもわからなかった。VUCAを生きるために必要な力についても、どんな力を重点的に伸ばしていきたいのか、もっと先生たちと相談しながら進めるべきだった。。

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では、一体全体どうやってこの壮大な目標へ向かていったらいいのでしょう?学校からいただいた授業内容には【 地域の大人たちの活動を通じて、地域の魅力・課題を見出し、積極的に地域にでてアクションを起こす 】とあります。

 

つまり、地域課題解決型でどんどんアクションできるように高校生をサポートすればいいのね!と私は理解しました。

 

しかし、年間スケジュールに示されていたのは、講師付きのグループ探究に取り組むのは前期だけで、後期は前期の学びをもとに個人探究に移行するということ。

 

え?せっかくグループをつくるのに個人になっちゃうの?

 

しかも、講師付き探究に割り振られた授業時間は6コマのみ。

 第1回(4月) パネルディスカッション
 第2回(5月) グループ立ち上げ
 第3回(6月) 探究アクティビティ➀
 第4回(6月) 探究アクティビティ➁
 第5回(7月) 探究アクティビティ③
 第6回(7月) ふりかえり

第1回のパネルディスカッションは、高校生たちにグループを決めてもらう判断材料として講師たちが自己紹介と活動内容の提案をするという場になっており、第2回~第5回でグループごとに活動し、第6回で振り返りを行うという流れになっています。つまり、実質活動できるのは4コマ×100分です。

 

思っていたより少ないぞ…4コマでどこまでやれるか…不安になってきた。

 

最初の1コマはお互いを知るための関係構築と課題設定に使うとして、残りの3コマでアクションまで起こすのはなかなかに厳しそう。個人探究につなげていくことを思うと、グループ活動だけでなく、一人ひとりの興味関心にも目を向けていかないといけないし…どうしよう。

 

同じような不安を抱いた講師の方もいらっしゃったようで、あらためて学習係りの先生から、講師付きグループ探究でどこまでを目指すのか説明がありました。それによると、

▶生徒個人の問いややりたいことがぼんやりでも浮かんでいる状態になっていたらOK
▶地域の大人たちはこんな問題意識をもって活動しているんだという実感を生徒にもってほしい
▶アクションとはあるけど必ずしも具体的な行動につながっていなくてもいい

とのこと。

 

ならば、個人探究につながるように、「自分の興味関心と地域との接点が見つかっている/できている状態」をグループ探究の目標に設定しよう。

 

グループ探究の内容としては、事前に学校からいただいた9つのテーマ(防災・減災、新しい学校、健康・スポーツ、地域活性化、観光、途上国支援、子育て支援、国際協力、自然・食・農)のうち「自然・食・農」を担当させていただくことになっていました。

 

ただ、私がほかの講師の方と違うのは地元の人間ではないということ。よそ者だからこそ、授業内容はつくり込まずに、地域課題の発見から高校生たちと一緒にやっていこうと決めました。

 

そんなこんなで第1回のパネルディスカッション。
ほかの講師のみなさんが地域での活動とご自身が抱える課題についてお話されるなかで、「探究の授業に答えはありません!地域の自然や食をテーマに、知りたいこと・やってみたいこと、一緒に取り組んでいきましょう!」とやや場違いな投げかけをして、東京の大学生活やイギリス留学のことも聞きたければぜひ~というようなこともお話しました。

 

実際、「自然・食・農」のテーマで語れる課題は、気候変動、食糧危機、農家の減少と高齢化、耕作放棄地の増加、獣害などなど、いくらでもありますが、社会や大人が設定した課題を高校生に押しつけるのは探究としてナンセンスだと思います。課題の発見からやるよう指導要領にも書かれていますし。

 

それに、学校という組織・システムのなかで、答えありきじゃなく点数評価もされない科目は総合探究ぐらいなんだから、好きなことやったらいいじゃん。と斜に構えた考えもありました。

 

なんなら、探究の授業すら関係なく、将来のことなども気軽に話せる人として、高校生のそばにいられたらいいなと思っていました。その方が「自己の在り方生き方」を考えるきっかけになれるんじゃないかと本気で思っていたから。

 

///天の声///

それがね~なかなか理想通りにはいかなかったよね。このときは色んなことに興味を持ってくれる高校生像を描いていたな。。自分の母校をベースに考えちゃったのがよくなかったと思う。東京と地方では状況も違うし、私が高校生だった頃と彼らの生きている時代も違う。総じてバックグラウンドに対する想像力が圧倒的に足りてなかったよ。

/////

 

私の想いが伝わったのかはわかりませんが、パネルディスカッション後にグループ配属の希望をとったら、自然・食・農がかなり人気だったそうで。当初、20名程度だろうと聞いていたのですが、蓋をあけてみたら40人。

 

びっくりしました。嬉しかったけど、同時に、40人分の興味関心と地域との接点をどうつくれるか、わくわくと不安が入り混じる気持ちで、授業の準備をはじめました。

 

初回の授業では対話型のワークショップで自己紹介とチーム分けをすることに。そこで決まったチームにメンターを配置して、なるべく生徒一人ひとりに寄り添える体制を構築するという作戦です。

 

///天の声///

この作戦がよかったのかどうかは今でも考えてる。授業をつくるのが初めてだっから何をすればいいかわからず、ワークショップをするしか脳がなかったんだよね。さっさとチームにわけて地域とつなげていきたかったというのもある。


ただ、後々わかったんだけど、ここの高校生たちは探究のねらいもよくわかってなかったんじゃないかなって。問いを立てることや質問の練習もあまりやってきてないようにみえた。だから、初回の授業では探究学習の基礎的な話をしてもよかったかもと思う。


このことに早めに気づくためには、もっと先生たちとコミュニケーションをとる必要があったと反省。これまでの探究で何をやってきたのかを確認しておくべきだったよね。

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今回はここまで。探究の授業をつくる上で、目標と内容を考える際の教訓をまとめます。

 

〜教訓:総合探究の目標と内容の設定〜

 

▶︎授業目標の意図について学校側に確認した上で、講師としてどこまで目指すべきか擦り合わせておこう


▶︎生徒たちのバックグラウンドや性格をできるだけ把握・想像しておこう


▶︎これまでの授業で何をどこまでやったのか学校側に確認しておこう


▶︎探究のねらいや進め方のコツのようなものを生徒に伝えられるようにしておこう

 

次回は、素人ながら探究学習のプロセスを意識して整理したメンターとしての心構えについて書いていきます。

 

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