世界と日本の風と土

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日本とイギリスで農村計画を学ぶ女子学生のブログ。いかしいかされる生態系に編みなおしたい。

探究学習を探究する教育ド素人の挑戦 #3 〜伴走者の心構え〜

教員免許なし・塾講経験なし・子育て経験なしのアラサー大学院生によるトライ&エラーがとまらない高校の授業づくりの本音と本気の記録パート3

 

今回は「総合的な探究の時間」(以下、総合探究)で高校生の探究に伴走するメンターとして心がけたことについて書きます。

 

前回のブログはこちら

windtosoil.hatenablog.com

 

初回の授業まであと3週間。40人の高校生が待ち受ける「自然・食・農」グループでの4コマの授業をいかに充実させられるか、腕が試されます。って言っても素人なので腕もなにもないけど。

 

今どきの高校生ってどんなことを考えて日々過ごしてるんだろう?何に興味あるのかな?そんな妄想をしながら、少しでも探究っておもしろいと思ってもらえるように頭をひねる。

 

うーむ、今どきの高校生…わからぬ。


じゃあ、逆に、私自身はどんなときに探究欲・知的好奇心が爆上がりする?

 

そうだなぁ。自分の知らない世界に気づいてしまったとき。新たな扉があいてしまった感というのか。理解できないって思った瞬間にスイッチ入るね。未知との遭遇はだいたい他者との関わりのなかで生まれたりするもの。いわばカルチャーショック。

 

そんな価値観ゆさぶられるような体験を高校生たちにお届けできたらいいな!

 

というわけで、高校生たちが新たな気づきを得られるような関わり方を意識したいと思いました。

 

しかし、私1人では40人を新たな気づきへ導くことなんて絶対無理。それに、いろんな人と関われた方が高校生にとっても良いだろうと思ったので、研究室の後輩や地域の大学生、地域おこし協力隊の方々に声をかけたところ、6名の素晴らしい方々にサポートしていただけることに。心強すぎる。

 

よし、人はそろった。
で、探究ってどうやって進めるの?

 

まずは学習指導要領をみておきましょうかねぇ…とパラパラすると、探究のプロセスとして「①課題の設定 → ②情報の収集 → ③整理・分析 → ④まとめ・表現」をスパイラルに繰り返すことが示されています。大学の卒業研究みたいでなんとなくイメージは湧くな。

出典:高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説. 総合的な探究の時間編 p.12

 

サポートする側としては、この探究の過程で生徒の「主体的・対話的で深い学び」を促すことが重要とされているようです。以下、具体的に記されている箇所を抜き出してみました。

 

~主体的な学び~


▶「主体的な学び」とは,学習に積極的に取り組ませるだけでなく,学習後に自らの学びの成果や過程を振り返ることを通して,次の学びに主体的に取り組む態度を育む学びである。


▶課題設定については,生徒が実社会や実生活と自己との関わりから問いを見いだし自分で課題を立てることが大切である。


▶振り返りについては,自らの学びを意味付けたり,価値付けたりして自覚し,他者と共有したりしていくことにつながる。振り返りを通して,自分の人生や将来について考え,学んだことを自己のキャリア形成の方向性と関連付けることが求められる。

 

~対話的な学び~


▶「対話的な学び」とは,他者との協働や外界との相互作用を通じて,自らの考えを広げ深めるような学びである。


▶一方で,協働的な学習はグループとして結果を出すことが目的ではなく,その過程を通じて,一人一人がどのような資質・能力を身に付けるかということが重要である。


▶「対話的な学び」は,学校内において他の生徒と活動を共にするということだけではなく,一人でじっくりと自己の中で対話すること,先人の考えなどと文献で対話すること,離れた場所を ICT 機器などでつないで対話することなど,様々な対話の姿が考えられる。

 

~深い学び~


▶ 深い学びの鍵として「見方・考え方」を働かせることが重要になる


▶「見方・考え方」は,「どのような視点で物事を捉え,どのような考え方で思考していく のか」というその教科等ならではの物事を捉える視点や考え方である。


▶「深い学び」については,探究の過程を一層重視し,これまで以上に学習過程の質的向上を目指すことが求められる。

 

ふう、学習指導要領を読んでいると、そんなにうまくいくのかなぁと溜め息がでてきます…。まあ、どういう状態が理想で何が重要なのかはわかりました。

 

でも、メンターとして探究の過程をどうサポートしていったらいいのかは全然わかりません。そこで、いろいろ参考になりそうなものを調べて整理しました。

下記はメンターのみなさんと探究の進め方を共有するためにつくった資料からの抜粋です。今見返すとちょっと偉そうだけど、素人なりに “よい授業をつくりたい!” と必死でした。それに、メンターをお願いした(巻き込んだ)手前、ちゃんと全体をリードしていかなければという気持ちも強かったです。

 

チーム活動の進め方

出典:地域・教育魅力化プラットフォーム編(2019)『地域協働による高校魅力化ガイド』岩波書店.p.124
  • フェーズ1を夏前までの目標として考えています
  • グループ立ち上げはフェーズ1の「1.自分を見つめ関心を言葉に」を重点的に行います
  • フェーズ1の「2.課題設定」以降は各チームで深めていきます
  • 週1程度でチームミーティングを行い(※生徒に要確認!強制・やらされ感にならないようチームで関わり方は決めてください) 、次回の探究アクティビティ①までに「課題設定」と「情報収集」が進められていると理想的です。
  • 探究アクティビティ①〜③でフィールドワークなどを通して「情報収集」「整理分析」を深め、さいご7月のふりかえりで「まとめ・表現」を実施する流れです

 

///天の声///

実際、授業をすべておわってから見返すと、理論的にいわれていることって本当に究極の理想でしかないなあと感じる。こんな風に段階的になんて全然いかなかったよ(´;ω;`)。まず、「1.自分を見つめ関心を言葉に」を促すのがとっても難しい。高校生自身が自分は何に興味関心があるのか、どんなテーマだったら没頭できるか、ちゃんと自己に向き合った上で言語化するって相当ハードルが高いということが痛いほどわかった。


探究って、実際のところ「2.課題の設定」が一番大事なんじゃないかな。学習指導要領もよく読むと、「各自の課題の設定には十分な時間をかけてよい。必要に応じて,単元の総時数の 3 分の 1 程度を当てることも考えられる。十分な時間をかけて一人一人の生徒にとって価値のある適切な課題を設定することが大切である。」と書いてあった、、


4コマだけの授業で、小さな探究のサイクルを1回まわすよりも、課題設定にじっくりと時間をかけた方がよかったかもしれないな。

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チームづくりのポイント

成功の循環サイクル(出典:https://www.gaiasystem.co.jp/human/grossary/koujyunnkannakujyunnkann/
  • 「グッドサイクル」をまわしていけるよう意識していきましょう
  • チームの成果を高めるためにはまず「関係性の質」を高めることが重要であるとされています(「学習する組織」)
  • チームメンバーの関係性によっては、いきなり調べ学習をはじめるのではなく、お互いのことを知って仲を深める時間も大事にしていきましょう
  • バッドサイクルになりそうなとき  →  メンター部屋(Slack)へGo

 

///天の声///

「関係の質」本当に大事!!もう、ここなくしてはチーム活動なんてできないのよね。「関係の質」を高めるのにはかなり時間がかかるという読みも甘かった。。


理想として、高校生たちが新たな気づきを得られるように…と思っていたけど、「関係の質」が低ければ「思考の質」も低いまま。4コマしかない授業でどうしようもない面はあったし、そもそもクラス関係なくテーマで集まった40人だったから、はじめましてからのチームづくりはかなり無理があったなあ。

私としては、はじめましての人たちとコミュニケーションをとることも社会的スキルとして重要だと思ってのチームわけだったけど、今回は最初からある程度仲の良いもの同士をくっつけた方が短い時間でも質の高い探究ができたかもしれないね。

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メンターとしてのお願い

子どもの参画のはしご(ロジャー・ハート)(出典:https://coelog.chuden.jp/child-raising/02/
  • (できるだけ)  教えない、答えを与えない、干渉しない、を心がけていきたいです
  • 情報提供や問題意識の共有はOK!アドバイザーというよりは一緒に頭抱えて考える伴走者のイメージですが、意思決定は高校生に委ねていきましょう
  • 「子どもの参画のはしご」の④以上を目指していきたいです
  • 生徒の様子を見つつ、できるだけ「問いや課題を自分たちで決めて活動できている」と実感できるようサポートお願いします
  • やらされ感ではなく好奇心や気づきが生まれるようサポートしていけたらと思っています。メンターとしてのお悩み等はメンター部屋へ!みんなで考えながら進めましょう

 

///天の声///

”やらされ感にならないように”というのは、とくにメンターとして心がけたことだったけど、だからといって、やりたい放題はちがったなと大反省。前回のブログにも書いたように、問いの立て方を練習してからフィールドワーク等につなげるべきだった。いきなり「子ども主導の活動」は理想が高すぎた。

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ということで、理論と実践には乖離があるということを今ではひしひしと感じます。メンターの心構えについて得られた教訓はこちらです。

 

〜教訓:メンターの心構え〜

▶︎探究のプロセスのなかで「課題の設定」が一番大事!課題設定には十分に時間をかけよう


▶グループで探究する際は「関係の質」を高めることが重要!時間数が限られている場合は既に関係が構築されているメンバーではじめるのもあり


▶主体的であっても、問いや課題の無い “やりたい放題” は探究ではない

 

次回からは実際に行った授業を回想しながら、何がよくて何がわるかったのか振り返っていきたいと思います。

 

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更新しました!

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