教員免許なし・塾講経験なし・子育て経験なしのアラサー大学院生によるトライ&エラーがとまらない高校の授業づくりの本音と本気の記録パート4
今回は「総合的な探究の時間」(以下、総探)で行った原体験を深掘るワークショップについて振り返ります。
前回のブログはこちら
あらためて全体の流れを整理すると、F高校の総探では【 地域の大人たちの活動を通じて、地域の魅力・課題を見出し、積極的に地域にでてアクションを起こす 】ことを目指しています。
私たちが講師役として関わるのは前期6コマのみ。後期は個人での探究活動になるということだったので、それまでに高校生たちが「自分の興味関心を軸に地域との接点が見つかっている状態」になってもらえるよう授業を進めることにしました。
第1回(4月) パネルディスカッション
第2回(5月) グループ立ち上げ ← 今回
第3回(6月) 探究アクティビティ➀
第4回(6月) 探究アクティビティ➁
第5回(7月) 探究アクティビティ③
第6回(7月) ふりかえり
今回の「グループ立ち上げ」は、9つのテーマから<自然・食・農>を希望してくれた生徒40人と私含むメンター7人がはじめて顔を合わせる授業です。
以下、授業のゴール(授業後に生徒がどういう状態になっていてほしいか)を設けて、100分間の中身をつくっていきました。
◉周りの生徒やメンターのことを知り、話しやすい安心感を得られている
◉<自然・食・農>のテーマから自分の興味関心キーワードを見つけることができた
◉今後の探究アクティビティに向けたチームわけが完了し、次までの動きがイメージできている
私の思惑としては、授業のコマ数も限られるので、とにかく40人を興味関心が近いもの同士でチームにわけてしまって、各チームで探究を深めていく方がよいだろうと考えました。
ということで初回は<自然・食・農>にまつわる原体験をたくさん話してもらい、そのなかから特に気になる・もっと知りたいキーワードを選んで、似た者同士でチームになるというワークショップを企画しました。
///天の声///
ちょっとここで危うかったなと思うのは、担当の先生への確認がギリギリだったこと。勝手にワークショップやる気まんまんで準備していて、先生からメールいただいたのが授業4日前でした。それまで担当の先生がいることすら知らなかったんだけどね…。メールの内容は幸いにして「40人も生徒がいると普通の自己紹介じゃ無理なので考えがあれば教えてほしい」というものだったので、ワークショップやりますね~と返事してOKいただきました。ほっとした。先生も4日前になって思い立ったように連絡してくるのはギリギリでしょうと思ったけど、私も気が回らなかったな。
ほんとは私から早めに先生にご連絡して、オンラインミーティングでもやっておけばよかったと思う(そもそも担当者を確認しておくべきだった)。お互いにどんな役割を担えばいいのか全くすり合わせなしでスタートしちゃったのが後々ひびくことになるので。。
/////
さて、ワークショップデザインの話に戻ります。
会場セッティングとしては、4~5人のグループになれるよう机をくっつけて、その上に模造紙、マジックぺン、A4用紙、ネームシールを用意しておきました。BGMは高校生が好きそうなJ-popを流して楽しそうな雰囲気づくりを心がけます。
続々と集まってくる高校生たち。好きな席に座ってね~と促します。
///天の声///
はい、ここ。好きな席でいいんだけど、なるべく喋ったことがない人と一緒になるよう伝えるべきだったな。これから自己紹介をするのに、知り合い同士で座っていたら意味がない。しゃべりやすさを重視して好きなところに座ってもらえたらと思ったけど、全員知り合いは避けてねと言えばよかったな。
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ということすら気づかぬまま授業スタート。全体の進行を意識してばかりいると細かいところになかなか気づけなかったりするものです。
スケージュールはこんな感じ。
授業のゴールを伝えたあとは、グラウンドルール(この時間で意識してほしいこと)を共有しました。
そして、緊張をほぐすための自己紹介ワーク。
ちなみに<自然・食・農>を選んだ理由はいろいろでした。
・自然が好きだから
・食べることが好き
・直感
・おもしろそうだったから
・自然と関わった遊びなどをするのが楽しそうだったから
・講師がかわいかったから!
(うれしい…!ま、若い女性は一人だけだったからね~)
「グループ立ち上げ」の前に全体でおこなった「パネルディスカッション」を聞いて、楽しそうな印象をもってくれた子が多かったらしい。よかった。
と、場の空気も和んできたところで、今回のメインである原体験ワークショップに入ります。ワークショップは完全にオリジナルでこの日のために考えたものです。いきなり高校生相手にやるのは不安だったので、研究室の後輩と試しにやってみて改善をくわえました。ありがとう。
ワークショップは3部構成になっています。まずは思いつくだけ<自然・食・農>の原体験を付箋に書き出してもらいました。感情記憶をよびさますことで自分が何に興味をもっているのか引き出しやすくするのがねらいです。
そして、それらの付箋を机の上に広げてある3つの円(自然・食・農)が描かれた模造紙に貼りつけていきます。
次に、エピソードごとバラバラになっている付箋をキーワードでくくっていきます。
大きい付箋を使ってグルーピングしていきます。
これで、みんなの原体験からキーワードが浮き彫りになりました!
グループによって出てくる要素がちがって、とてもおもしろかったです。
山あり川あり自然いっぱいの環境で育った子たちなので、ほんとうに豊かな<自然・食・農>の体験をしてきたのだなあと見ているだけでニコニコしてしまいます。うらやましい。きっと彼らには当たり前なのでしょうけど。そういった驚きを伝えるのも講師の役割だと思いました。
学校や家族とのほっこりエピソードもたくさん話してくれたようです。「竪穴住居を作った」のはあの小学校かな。楽しそう。
よかったことだけでなく、好きな木が切られてしまったとか畑がなくなったなど「切ない」ことも大事な原体験ですね。
さて、最後は自分たちで名づけたカテゴリーから気になるものを1つ選んでもらいました。
それぞれ選んだキーワードを見せ合いながら似た者同士でチームをつくっていきます。
ここで予想外の展開に。「アウトドア」「自然体験」「自然遊び」を選んだ生徒が20人近くいたんです、、偏りすぎ。
どうしようかと頭をひねるも迫りくる終業チャイム。まずい、早くチームにわけないと。焦っていた私は、エイヤーの勢いで「端から番号ー!1・2・3・4・1・2…」というようにランダムに割り振ってしまったのです。
///天の声///
これがよかったか悪かったか。こちらの都合を優先する前に、生徒にゆだねてみてもよかったかもしれないと反省。ある程度、知っている者同士のチームにした方が良い活動ができたかもしれないとも思う。この時は、ランダムにあたった人とうまく活動していくスキルも大事だろうと思っての判断ではあったけど、3回しかないチーム活動のなかで、はじめましてからスタートすることの大変さを想像しきれなかったな。
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最終的に11のチームができました。それぞれにメンターが1人ずつ付くよう割り振って、次回以降のチーム活動に向けたLINEグループやSlackに登録してもらい、今日の授業はおしまいです。
今どきの高校生はみんなスマホや学校から配布されたタブレットを持っているのですごいです。ただ、学校のWi-fiが弱いのは誤算だった。
以上、ワークショップの設計から実施までの流れでした。
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これ終わったあと、すんごく疲れて、やりきった感がすごかったです。探究の授業づくりは、それこそ答えがなくて、どうやっていくのが生徒にとって学びにつながるのか、主体的に関われる場がつくれるのか、不安や迷いなく対話ができるのか…
場づくりをゼロから1人で企画して実施したのは初めてで、しかも、単発の場ではなく次の授業に繋げていく設計にしなければならず、一緒にやってくれるメンターとの調整や連絡、役割の明確化などもやらなければならないし、先生との連絡や確認もあり、同時に自分の研究のためのデータ集めや記録もしないとならないし、ほんとにいろんな軸で考えて組み立てて、やっていかないといけないという緊張感がありました。
でも、成功も失敗もないんだ。“やってみる” それが一番大事。やってみたらわかることがある。今回もやってみて、いろんな至らなかった点がみえてきたし、意外とうまくいったなと思えた部分、なにより生徒同士がすごく楽しそうに話していて、先生方も盛り上がりに驚いていて、あの場面を見られてたことがとても嬉しかったです。授業後アンケートも90%以上が「楽しかった」とこたえてくれて、すごく嬉しくて、疲れて頭いたかったけど涙出てきたりして、はじまったばかりなのに感動しちゃった。
こういう小さな試行錯誤を重ねていきたいと強く思えた経験でした。
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ワークショップの実践を通して得られた教訓をまとめます。
〜教訓:ワークショップの設計と実施〜
▶原体験を語り合うワークは生徒の緊張をほぐし対話を促したり興味関心を見つけてもらったりするのには効果的だった◎
▶︎ワークショップは相手の状況と次回以降の連続性を意識した設計にしよう
e.g. 知っている者同士をくっつけるか避けるか
▶手段と目的を履き違えないように気をつけよう
e.g. チームわけは手段であって生徒に主体性を発揮してもらうことの方が大切
▶担当の先生とは早めに連絡をとりあって役割を明確にしておこう
▶進行役は森を見て木を見ずに陥らないよう常に参加者の表情や熱量を感知しながら場を動かしていこう
▶参加者には積極的に驚きを伝えよう