心が動いた言葉をログするココログvol.4。今回は環境活動家、谷口たかひささんの講演会からログします。
以前からインスタグラムで見かけて、気になっていた谷口さん。全国をまわりながら気候変動について伝える活動をされています。"環境活動家" というと、すぐ思いつくのはグレタ・トゥーンベリさんのような怒りと涙で訴える人の姿だったのですが、谷口さんはちょっと雰囲気が違う。なんというか、環境問題そのものよりもご自身のマインドの話を中心に発信されていて、まるで生きる啓発本。その辺の自己啓発本を読むよりも谷口さんのお話をきいた方が人生前向きになれるかも?笑
■谷口たかひさ
ドイツ在住の環境活動家&実業家。 気候変動の講演で日本(全県達成)と世界を周り中。『地球を守ろう』代表。「時間と共に価値が減るお金」も取組む。
ー谷口さんのホームページ
とありますが、日本で講演会をはじめたら引っ張りだこになってしまい、そこにコロナの感染拡大がきて、ドイツの家は引き払ってしまったそうです。「ホームレス環境活動家の谷口たかひさです(笑)」と自己紹介されていました。毎日のように全国を飛び回っていて、本当にすごいなぁ。
私が参加させていただいた講演会のフルバージョンはこちら。300回も講演されているだけあって、お話がとてもわかりやすいし、”伝わる”ってこういうことなんだなと勉強になります。なにより、この講演会を主催してくれたのが、谷口さんのお話を聞いた中学生の男の子ということで、言葉の力を感じました!
世界はどんどん悪くなっているという思い込み
谷口さんの講演会はクイズから始まります。
Q1.自然災害で毎年亡くなる人の数は、過去100年でどう変わったでしょう?
A.2倍以上 B.変わらない C.半分以下
Q2.世界の平均寿命はおよそ何歳でしょう?
A.50歳 B.60歳 C.70歳
Q3.1996年には、トラ・ジャイアントパンダ・クロサイはいずれも絶滅危惧種として指定されていました。この3つのうち、当時よりも絶滅の危機にひんしている動物はいくついるでしょう?
A.2つ B.1つ C.0
Q4.世界中の30歳男性は、平均10年間の学校教育を受けています。同じ年の女性は何年間学校教育を受けているでしょう?
A.9 B.6 C.3
Q5.いくらかでも電気が使える人は、世界にはどれくらいいるでしょう?
A.20% B.50% C.80%
Q6.世界の人口のうち、極度の貧困にある人の割合は、過去20年でどう変わったでしょう?
A.約2倍 B.変わらない C.半分
ピンときた方もいるかと思いますが、『FACTFULNESS』という世界的に大ヒットした本の内容ですね。答えは谷口さんの動画か本でチェックしてみてください。
【ビジネス書大賞2020 大賞受賞作】FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣
- 作者:ハンス・ロスリング,オーラ・ロスリング,アンナ・ロスリング・ロンランド
- 発売日: 2019/01/11
- メディア: 単行本
ここで言われていたのは "社会問題に関心がある人ほど世界を悲観的にみている" ということ。
そんななか、実は数えきれないほどの「小さな進歩」が世界中で起きていて、今や世界人口の85%は、以前「先進国」といわれた枠の中に入っているし、極度の貧困の中で暮らす人びとの割合は、20年前には世界人口の29%だったのが、現在では9%にまで下がっているんだって!!これはすごい進歩です!
しかし、私たちの多くはこの事実を知りません。知っていたとしてもネガティブ本能が発動されて、無意識に脳にフィルターがかかってしまうみたい。そこに大きく影響しているのがメディア。世界はいつだって悪いニュースのオンパレード。暗い話はニュースになりやすいけど、明るい話はニュースになりにくい。そんでもって、メディアはWhatは伝えるけどWhyは伝えないと谷口さんがおっしゃっていて、本当にそうだよなと思いました。
ジャーナリズムのあり方を問い直さないといけないし、私たち自身も騙されないように気をつけないといけませんね。
世界は思っているよりも良くなっている。
「人類は改善と成長を繰り返しているから、基本的に未来はめっちゃ明るいんだ」ってことを前提に希望の話をしましょう!
人類存続のための3つの希望
①ほとんどの人がまだ気候危機を知らない「みんなが知れば必ず変わる」
今年もあと2ヶ月を切りましたね〜。クリスマスにお正月、コロナのおかげで例年通りにはいかないけれど、年末までのカウントダウンがはじまっています。これと同時にもうひとつ、たくさんの人が気づいていない大事なカウントダウンがあるそうです。
それは、気候危機を人類が生存可能なレベルにおさえられるかどうかのタイムリミット。
2019年7月24日、英国のメディアBBCが「気候危機を人類が生存可能なレベルにおさえられるかはこの18ヵ月にかかっている」と報道しました[1]。私も英国にいたので、やたらと気候変動関連のニュースが多いことには気づいていたんだけど、"やっぱヨーロッパは環境意識が高いなぁ"って思ったぐらいでした。いやぁ、谷口さんとは雲泥の差だよ。こういうこと、ちゃんと伝えようと行動に移せるかどうかだよな(しょぼーん)。
でね、カウントダウンの話に戻ると、18ヶ月っていったら2021年の1月24日なの!もうすぐじゃん、やばいじゃん!
2015年に約190の国と地域で合意されたパリ協定では、21世紀末までに「世界の平均気温上昇を産業革命前と比べ2.0℃より十分低く、1.5 ℃未満に抑える」ことが目標にされているんだけど、そうするためには、世界の二酸化炭素排出量が2020年までにピークを迎えなければならないらしい。
地球が1.5度以上温まるとどうなっちゃうかというと、突発的な豪雨やハリケーンが増えて、熱波や洪水のリスクも高まるし、海面上昇で住む場所を追われる人が増えたりする。環境難民も増えていくだろうな。
日本も他人事ではないです。
イギリスのエコノミスト誌が世界144ヵ国を対象に行った「Global Peace Index(世界平和度指数)」によると、気象災害リスクのランキングで日本はなんと世界2位。今後ますます気候危機の影響を受けることがわかっています。もう既に台風や豪雨でたくさんの被害が出ているのに、この先どうなっちゃうんだろう。
こうしたなか、菅政権が2050年を目標にカーボンニュートラルを目指すと発表しました(やっとだね)[2]。そして、民間でも東芝が石炭火力発電からの撤退を公表しました[3]。日本も少しずつ動きはじめています。
過激なことをしなくてもいい。
完璧を目指そうとしなくてもいい。
「みんなが知れば必ず変わる」
1人の100歩より100人の1歩。
②自分の「自由と権利」と「力」をまだ発揮していない。
ノミってめっちゃジャンプするんだって。体長(2mmほど)の100〜150倍も跳ぶらしくて、私で例えると164cmなので164cm×150=246m、つまり東京都庁のてっぺんより高く跳べることになります。風圧やばそう…笑
ここでノミを高さ10cmの容器に入れて蓋をしたらどうなると思いますか?ノミは蓋にぶちあたって、低く跳ぶようになります。しばらくして蓋を取ってみると、蓋があったところまでしか跳べなくなってしまいました。(ノミも学習するんだぁ)
これって人間にも同じことが言えるよねと谷口さんは投げかけます。幼い頃には夢や希望で溢れていたのに、いつの間にか自分で自分の可能性に蓋をしてしまったり、親や先生に蓋をされてしまったりして、自分の本来の力を発揮しきれずにいるんじゃないかと。
でも、この話には続きがあって、もう一度高く跳べるようになる方法があります。
すごく単純なんですが、跳べなくなってしまったノミを自由に跳びまわっているノミの隣に置いてあげればいいのだそうです。
「あなたには権利と自由があります」
「あなたのことを否定してくる人の目的は、あなたを否定することじゃない。人を否定することで自分のことを肯定したいのです。そういう人があなたの人生や判断に責任をもってくれることは、絶対にない。」
このマインドセット、ほんとに大事よ。人生一度きりなんだから、その舵取りを他の人に渡してしまったら損です。
「日本では「義務」は教えるが「権利」は教えない」(ヨーロッパでは権利と自由を教える)
そんな言い方を谷口さんはされていたんだけど、ここに関しては、ちょっと言い過ぎかなと私は思った。たしかに、"こうあるべき" が強すぎて生きづらい面はあるけれど、あらゆる権利は憲法で保障されているし、そのことを一応 "義務" 教育では教えている。ただ、権利の使い方は教えてくれません。
日本人だろうが欧米人だろうが、みんな見えない蓋を抱えて育つんだと思う。それに気づけるかどうか。それを開けてくれる人(とくに大人)が周りにいるかどうか、それだけだと思います。
③Climat change は Climate chance
どうしてまだ間に合ううちに、なにもしてくれなかったの…?
こうした未来の子どもたちの声に駆り立てられるように、全世界で気候危機に対する活動が行われている今、
「人類が協力し合う人類史最大のチャンス」がおとずれようとしていると谷口さんは言います。危機をチャンスにとはよくいうけれど、気候危機にしてもコロナにしても、世界共通の危機に立ち向かうことで、人は分断をやめられるかもしれないとの希望的観測があるのは確かです。
希望的観測っていったのは、大衆化には危険が伴うから。
「社会問題に関心が向いている人ほど視野が狭く、ヒステリックになって、人に完璧を求めたり、正しいことを押し付ける傾向がある」と谷口さんも言っていたけれど
「自分が/自分たちが正しいと思ったときが一番悪」なのかもしれません。
正義の反対にあるのはもう一つの正義。
それを忘れないようにしたいです。そもそも他者をコントロールする権利なんて自分にはないし、そんなことできっこないのだから。
まとめ
結局のところ、自分が楽しいから動くのが一番なんじゃないかな。地球のためというのは、どこまでいっても人間のエゴでしかないと私は思います。家畜動物が可哀想っていうのもそう。"環境問題"っていう呼び方も変だなと思う。ひとりの人間として、自分自身の問題だと思うんです。
私はこれからも自分と周りの大切な人たちが快適で安心して暮らせるように、地球一個分の暮らしをゆるやかに目指していきたいと思っています。”地球一個分の暮らし”については、前回のブログを参考にしてもらえたら嬉しいです!
■参考
・谷口さんブログ「本当に価値のあるものは?」
https://hontounikachinoarumonowa.com
・地球を守ろう(谷口さん代表)
http://chikyuwomamorou.com
[1]Climate change: 12 years to save the planet? Make that 18 months - BBC News
[2]菅首相、2050年カーボンニュートラル宣言の舞台裏 | 日経クロステック(xTECH)
[3]東芝、石炭火力の新設撤退 受注停止、再エネに注力:時事ドットコム